エディッション(Edition, ED.)とは、本来『版』を表しますが、 通常『限定部数』(Limited Edition)の意味として用いられます。 また、『限定枚数』のことをエディションナンバー(ED.No.)といいます。 シリアルナンバーとも呼ばれることもあります。
版画は、油彩などのようにアーティストが1点ずつ描くのではなく、 版を作り何点かが一度に刷られるものです。 そういう意味では出版物なのですが、本や雑誌のように売れれば売れるだ け刷っているわけではなく、ある決められた限定部数だけ刷られています。 この限定部数はアーティストや作品、技法でまちまちで、 50部のもの、200部のもの、500部以上のものまであり、 アーティストやそのアーティストをプロデュースする人の考え次第ということになります。
現在では通常限定番号以外で、全ての摺り数の10%から 15%程度ほどの番外版画が作られることが多く、 E.A、A.P、H.Cなどがあります。 これら番外版画の本来の意味は保存用など 世の中に出回らないものですが、 通常限定番号の作品が完売した場合など、 実際にはよく市場に出回ることがあります。 番外版画でも限定部数入りの作品と芸術的価値も同じです。
E.A. | エプルーブアルティスト | 版画のアーティスト保存分 |
A.P. | アーティストプルーフ | |
H.C. | オル・コメルス | 非売品 |
T.P. | トライアルプルーフ | 確定保存版の意味 |
P.P. | プリンターズプルーフ | 刷り職人のための作品の意味 |
プレゼントプルーフ | 贈呈用 |
シルクスクリーンを作るもっとも簡単なやり方は、図柄を切り抜いた紙やフィルムに、目の粗い薄絹のスクリーンを貼りあわせる、というものである。 これによってインクの通る部分と通らない部分が区分されるので、あとはそれを版として紙のうえに乗せ、適量のインクをヘラ(スキージー)で伸ばしてゆけばよい。 原理的にはステンシルと同じである。 ただし、この方法では精緻な図柄は作れない。 そこで通常は、あらかじめ溶剤を一様に塗布されたスクリーンから、図柄となる部分を熱や薬液で溶して「孔」をつくる。
版の「孔」の部分を通過したインクが図柄となるので、版画・印刷技法のなかでは孔版に分類される(上記のステンシル、古くは、学校などで藁半紙に印刷していたガリ版印刷なども孔版の一種である)。
凹版画とは、版の凹部で図柄を構成する版画技法である。
西洋美術の世界では、もっとも広く用いられた版画技法であり、とりわけルネサンス期以降、銅を版材とする銅版画において多くの製版技法が開発・蓄積されてきた。平版画や孔版画が未発達であった19世紀以前においては、単に版画といえば、多くの場合に「銅による凹版画」を指していた。銅が高価なため、今日では工業用や教材用としてポリ塩化ビニル板なども用いられるが、美術作品としては依然として銅材によるものが多い。
凹版画の印刷手順はまず、版全体にインクを乗せたのちに、これを布などで拭き、凹部にのみインクを残す。 あとは、この版と紙を重ねて圧力をかければ、凹部のインクが転写されて完成である。
しかし製版の手順は、それほど単純ではない。版の凹部をどう作るかで、いくつかの技法があり、大きく直接法と間接法に分かれている。 版に直接に凹部を刻む場合が直接法、酸などの浸食作用を利用して版面に凹部を作るのが間接法である。単一技法による作品もあれば、併用される場合もある。 ここでは直接法としてエングレービング、ドライポイント、メゾチントを、間接法としてエッチング、アクアチントについて詳説する。
エングレービングとドライポイント(直接法)
デューラーによるエングレービング作品。精緻な彫りなので、この画像の解像度では版画に見えない。
直接法としてまず、エングレービングとドライポイントについて詳説する。
エングレービングでは、ビュランと呼ばれる道具で溝を彫って図柄を作ってゆく。ビュランとは、V字型の刃をもった彫刻刀(三角刀)のような道具で、その削りくずは彫りだされ、版上には残らない。これに対してドライポイントでは、 先の尖った、きわめて硬度の高いニードルなどで版に線描する。ドライポイントは基本的に版にキズをつけるだけなので、削りくずは線の周辺に突きでたまま残る (ささくれ、まくれ)。
この違いは版の耐久性の違いとなって現れる。 凹版画とは版上の紙に強い圧力をかけてインクを転写する技法である。 エングレービングは凹部以外の版面はフラットなので、多量の印刷を経ても版が劣化しにくい。 紙幣の印刷にエングレービングが用いられるのはそのためである。 ドライポイントの場合は、刷れば刷るほど、線の周辺の突起部が押さえつけられ、次第に線がつぶれてくる。 印刷の少ない版であれば、線の周辺の突起部にわずかにインクが残るため、線に微妙な陰影がつくが、印刷が進むほどに線はより単調に、より弱々しくなっていく。 早い段階での印刷かそうでないかで、作品の印象も、価値も違ってくるのはすべての版画の宿命であるが、ドライポイントはとくにそれが顕著である。
エングレービングとドライポイントの長短は、版の作りやすさという点では逆転する。 エングレービングはかなりの熟練と労力を要する。エングレービングの大家を挙げる場合、しばしばルネサンス期のデューラーまでさかのぼられるが、そもそも美術史上でエングレービングに長じた作家は限られている。 ドライポイントはそれに比べれば、デッサンの技量が確かなら、習熟しやすく、製版時間も短い。 それでも、溝の深さのコントロールや、「ささくれ」「まくれ」による線の陰影まで計算した製版ができるまでには修練が必要である。
メゾチント(直接法)
エングレービングとドライポイントが線の表現のための技法であるのに対して、メゾチントは面の表現力を深める技法である。 「中間の色合い」を出せるというのが、その名の由来である。 ヨーロッパでまだ写真技術のない頃、肖像版画や細密版画で用いれられ人気があったが、写真の発達とともに省みられなくなり、「忘れられた技法」といわれることもある。 浜口陽三がこの技法を復興したことで知られる。
その製版工程は、これまでの技法と逆である。 エングレービングとドライポイントでは、平面の版に溝を刻むことで図柄を作ってゆくが、メゾチントでは、まず版全体にひじょうに細かな点や線を無数に刻んで、ざらつかせ (これを「目立て」という)、その後にこの「目」を削って平面をつくってゆく。 インクが残るのは当然、削られなかった部分である。
目立てだけを施した段階で印刷にかけると、全面が真っ黒の版画ができる。 ただし、真っ黒とはいえ、それは細かな点や線の集積なので、均一な黒ではなく微妙な陰影が出る。 目立ての粗密を調整すれば面のニュアンスも変わってくるし、また目をならす段階でも、どの程度もとの目を残すかで刷り色の濃淡を調整できる。 エングレービングやドライポイント作品に部分的にこの技法を用いれば、スムーズな階調の影をつけることもできる。
きわめて労力がかかるので (大作だと目立てだけで数ヶ月かかる)、普及に限界のある技法ではあるが、日本には浜口陽三や長谷川潔など、メゾチントを得意とする作家が多い。
エッチングとアクアチント(間接法)
間接法としてはエッチングとアクアチントがよく知られている。なお西欧語ではすべての間接法を総称して「エッチング」と呼ぶこともある。
エッチングとは銅版を防食剤で一面にコーティングしたのち、ニードルで線描し、酸に浸して腐食させる技法である。ニードルで防食剤を剥がした部分だけが浸食され、それが版の凹部となる。最後に防食剤を洗い流して版が完成する。 レンブラントはエッチングを好んで制作した最初期の作家であり、ほかの銅版画技法と併用するなど、意欲的にその表現可能性を拡大した。 凹版画のなかでは特殊な技能をもっとも必要としない技法なので広く普及している。 有名画家が「手ごろな」価格の作品を提供するためにエッチングを手がけることも多い。 そうした場合に腐食の工程にまで画家が関与するかどうかは画家のこだわり次第で、「職人任せ」の場合もある。ただし、腐食の時間を長くするとより深い溝になってはっきりした線になり、短くすると淡い調子になるなど、工夫次第で複雑な描画ができるので腐食の工程はけっして単純作業ではない。 近年では薬液を用いない乾式エッチングも開発が進んでいる。
エッチングが線の表現技法であるのに対して、アクアチントは面の表現技法である。 エッチングの場合は、版面に塗られた防食層を剥がしてその部分を腐蝕することで図柄を作るが、アクアチントは防食剤(松脂)を粉末状にして、銅版面が半分ほど露出する程度に銅版に振りかける。松脂が降りかかった銅版を裏から熱して銅版に定着させ、腐蝕液で腐蝕する事によってざらざらな面をつくる。 濃淡は腐蝕の時間で調節する。また、松脂を振りかける量でもニュアンスが変わってくる。 メゾチントの場合と違って、防食と腐蝕の二つの工程が余分に介在しているため、版面の仕上がりをコントロールするのはより難しい。 単独で用いられるよりも、他の線描技法と併用されることの方が多い。 水彩画のようなぼかし、にじみをつけるときによく使われたので、その名がある。
アクアチントの応用技法とされるものにシュガー・アクアチントがある。 これは、水が半偶発的に作る形状を定着させる技法であり、飛沫や水玉など特殊な模様をつけるためにもよく用いられる。 その工程はまず、銅版面に砂糖水を撒いたり、筆で広げたりして模様を作ることから始まる。 続いて、砂糖水を乾かして定着させ、そのうえから防食剤を塗り重ねる。 これを温水に浸すと、砂糖のうえの防食剤は砂糖が溶けるとともに剥がれ落ち、版面が露出する。 あとはこれを腐蝕の工程にかければ砂糖水による模様が版面に刻まれる。 場合によっては腐蝕の前に他の間接法が施される。 水溶性のものであれば砂糖でなくとも代替できるが、砂糖はその濃度を調整すると適度に粘り気が出て模様をコントロールしやすいし、なにより安価である。
平版画とは石版画、リトグラフと呼ばれているもので、油が水をはじく原理を利用している。1798年頃、アロイス・ゼネフェルダーが偶然から原理を発見し、以降ロートレックなどの画家が斬新で芸術性の高いポスターをこの方法で描いた。以前は巨大な石に描いていたが、近年は扱いやすいアルミ板を使うことが多い。専用のアルミ板などに油分の強いチョーク、クレヨン、油性のペンシル(ダーマトグラフ)などで描き、アラビアゴムや薬品を塗って、版を作る。注意する点は版にインクを塗る際、版が常に水で濡れていなければならないことである。紙に刷る度に、インクと水分が紙に移るので、版にインクを盛る前に必ず水で版を濡らす必要がある。そうしないとすぐに白いままにしておきたい部分にインクが付いてしまい、版が駄目になる。
孔版画は、インクが通過する孔(あな)とインクが通過しないところを作ることで製版し、印刷する表現。ステンシルが孔版画の特質を表しているが、現在では、シルクスクリーンが一般的で、製版された版にスキージと呼ばれるゴムへらのようなものでインクを紙へと押し出す。シルクスクリーン製版法は様々で、切り抜かれた型紙をスクリーンに貼り付けるカッティング法、直接、スクリーンに乳剤を塗りつける直接法、特殊な描画材で描いた上に乳剤を塗りつけ、描画材の部分のみを剥離させる直間法などがあるが、現在もっとも一般的であるのは、露光でスクリーンに定着する感光乳剤を利用する写真製版法である。 長く商業印刷として利用されてきて、版画表現としては歴史が浅く、50年代後半以降、アメリカ、ネオダダイズムの作家、ロバート・ラウシェンバーグ、ポップアートの作家、アンディー・ウォーホルらがシルクスクリーン版画作品を積極的に発表して以来、芸術メディアとして認知されるようになった。日本人作家では、東京国際版画ビエンナーレで注目された木村光佑、木村秀樹などが代表的で、また横尾忠則などのデザイナーによる表現も活発であった。
ジクレーは、超高密度デジタル出力版画の総称です。
高デジタル技術で原画をデータ化し、色みを忠実に再現した複製版画です。原画→データ化(PC)→印刷のプロセスで制作されます。ジグレーとはフランス語 で「噴射、吹き付け」を意味しており、その名の通り細かい粒子状の顔料インクをインクジェットで吹き付けて刷られています。虫眼鏡などで見てみると細かい 粒子が確認でき、通常の印刷とは違う事がよくわかります。
アメリカのHP社が初めにアイリスプリンターというドラム式のプリンターを開発した事で始まった事により別名「アイリス」とも呼ばれています。ピエゾグラフも同じ要領で制作されますがピエゾグラフはエプソン社の商標登録、イメージプログラフはキヤノンの登録商標です。
つまり同じデジタル出力版画でも使用する機械のメーカーで名称が変わるという事になります。
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